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2010/01/15

16と1/2.郵便局員AとB②

A「はい、次お願いします。」
次にBが手にした封筒には筆文字で住所が書き込まれている。
A「では、宛名から。」
ちょっと達筆過ぎて読むのが難しく、Bは封筒を横にしたり離してみたりしている。
B「宛名はえーと、…えーとね、読めません。」
A「えー?どれ見して。」
Aはそう言って手を伸ばし封筒を受け取った。AもB同様、「んー?」とか言いながら目を細めて見たり蛍光灯に透かしてみたり、なぜか匂いを嗅いでみたりしている。
B「読める?」
A「んー『マリニャック様』…かな?住所は『杜王町西公園内1―1』。」
B「本当?何で読めんの?」
BはAがしたように、その封筒を蛍光灯に透かして見たがそのようには見えない。
A「西公園内1―1、天文台だな。」
B「天文台って移転したよね?」
A「うん。職員か技士にマリニャックって人は?」
B「いたら俺らんとこに来ないでしょ。」
A「一応さ。」
Aはそう言うと立ち上がり『公共施設』の棚から古い方の『天文台職員名簿』を取り出してフッとホコリを吹いてからパラパラとめくった。
A「マ、マ、マ、…いない。マで始まる人がいないね。」
B「どれ、新しい方は?」
Bは隣にあった新しい名簿を見たが、やはりマリニャックという名前はなかった。
A「困ったな。」
B「仕方ないさ、返しましょう。」
A「よし、差出人は?」
B「住所なし、名前は…読めない。」
A「どれ見して。…トロピカルってなってる。」
B「何で読めんの?」
A「ちょっと開けてみようぜ。」
B「そうだね。じゃあオープナ。」
Bはそう言うと封筒の上の方を手で破り始めた。
A「ねえ、もっときれいにできないの?」
B「え?」
A「もういいわ。」
B「よし。開いたよ。」
A「えー、では『宛先、差出人を特定出来る文面、若しくはそれに準じた内容』はありますか?」
B「『宛先、差出人を特定出来る文面、若しくはそれに準じた内容』は、…ございません。つーか読めないんだってば。」
中の便箋にしたためられた文章は宛名のそれより更に崩れている。
A「んー、これは俺も無理だな。破棄。」
B「了解。『宛先、差出人共に不明の為、郵便法第87条2項に基づき書簡を処分いたします。尚、はふにんほにゃらりれりれ…』」
A「ちゃんと!」
B「『尚、確認の為に取得した個人情報については郵便法第1条5項の秘密厳守に従い、私達が外部に漏らす事は一切御座いません。この決定に異議のある方はただちに名乗り出てください。』」
A「異議無し。」
Aがそう言うとBは持っていた封筒を小さなシュレッダーに差し込んだ。ダララララ…封筒が最後まで入ったのを見ると、赤いボタンを押した。『ポン』と軽い音がして差し込み口から煙が出た。
B「よし、次。」

二人の仕事はこんな調子で延々と続くのだ。

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