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2009/06/20

10と1/2.逆輸入みかん

渋滞の先には幌付きの軽トラックが止まっていた。その周りには『もも1山5000円』とか『みかん1山3500円』とか、独特な細い字の看板が立ててあって、それが狭い道路の真ん中あたりまではみ出ているのだ。おまけに何か巨大な(スイカ位の大きさ)果物が道路に散乱していて、車列はそれを避けて通行しているが、中には踏み潰されてグシャグシャになっているものもある。軽トラックから転がった物だというのは明らかだ。

やっと渋滞を抜けた黒塗りの乗用車がその軽トラックの後ろにすごい勢いで止まった。砂利でブレーキがゾゾゾと滑った。運転手は顔を真っ赤にしていて興奮している。
「俺!言ってきますよ!ガツンと!っつーか何で誰も注意しないんすか!」
助手席に座っているチャンサーは、まあまあとなだめる。
「お前さ、急いでんならさ、そんな事するよりも先に車走らせたらいいんじゃない?」
「いや、許せんのです!こんな1キロ近い渋滞のキッカケがこれでは!値段もなんか高いし!」
「…まあ、言いたい事はわかるけど。」
「ならチャンさん!止めないで下さい!代表なんです!俺は代表として!」
「(代表?)あー、わかったよ。行けよ。ただ、ペプスカ、拳銃は置いてけよ。」
そう言われて、立ち上がったペプスカは腰から拳銃を抜いて運転席に置いて出ていった。
バムン!重厚な音がしてドアが閉まった。
「はあーぁ。血の気の多い奴。」
チャンサーは背もたれを倒して横になった。


しばらくしてもペプスカが戻って来ないので、チャンサーが頭をちょっと持ち上げて外を見ると、彼は果物トラックのおやじと笑いながら話をしていた。やたら目が離れているおやじだ。ペプスカはモコモコに膨らんだビニール袋をぶら下げている。
「…あのおやじ…モトギョか…。」
チャンサーが窓の上の方だけ少し開けたら会話が聞こえてきた。
「んじゃあ、ありがとうね。」
「へい旦那、また来ておくんな。」
「あー、そうだ。看板さ、道路に出さないでよ。渋滞してたよ。」
「風でね、動くんでさ。気を付けやす。」
「あと何か道路に転がってる果物も。」
「ん?あれはあっしではござんせんが。」
「あ、そうなの?んじゃあ。」

ジャリジャリと足音が聞こえてドアが開いた。
「チャンさん、見てくださいよ。これ。」
「何、お前、買っちゃったの?」
「へへ、みかんです。」
「3500円?これで?」
袋の中には見た感じ15個位のみかんが入っている。
「いやー、それがですね、高いっつったら安くしてくれまして、2500円に。」
「…それでも高ぇな。」
「本場イタリアからの逆輸入だそうです。」
「逆輸入?」
「そう、イッターリアです。」

おやじは看板を片付けた後軽トラックに乗って道路に出て行った。ペプスカは手を上げて見送る。
「あーあ、行っちゃったよ。ペプスカ、逆輸入ってそれ、国産て事だろ。」
「え?そうなんですか?」
「そうだよ。国産で、しかも明らかにぼったくりだよ。あいつモトギョだし。」
「あ、俺、モトギョとかそういう差別的な見方嫌いです。」
「いや、差別ではなくさ。」
「…あ、わかった。チャンさん、さてはイタリアみかんがうらやましくてそんなこと言うんですね?じゃあ、はい、あげますよ1個。良いんですよ、まだいっぱいあるし。」
ペプスカはみかんを1個ダッシュボードに置いた。

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コメント

ペプスカと同じく、逆輸入が正直いまいちわからない…(-ω-;)

輸入の逆だから輸出?
それとも輸出してから、もいっかい戻すってことぉ??

とりあえず☆
山梨県では、桃は隣の畑のおばちゃんからタダで一山もらえますっ♪(*^∀-)b

投稿: スズキ☆ピロ | 2009/07/01 07:39

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