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2009/03/14

5と1/2.M県警捜査一課

チャンサーは机にかじりついてスピードくじを削っている。机の上は銀色の削りカスにまみれたハズレくじや44口径のピストルやランニングシューズなんかも造作無く置かれている。
「チャンさん、はいお茶。」
「あ、うん。ありがとう。」
チャンサーはゴシゴシ手を休めずに答えた。ミチェルはチャンサーの机に隙間がないので少し怯(ひる)んだが、雑然と山積みになった漫画本をズッとどかして、あいたスペースに湯呑みを置いた。
「ここ置きますんで、肘、気を付けてくださいね。」
「あー、またダメだ。」
チャンサーは今削り終えたハズレくじを机の上に投げた。お茶をすする。チャンサーが後ろにのけ反ると椅子がギチっとなった。

「はあー。」
「それってよく当たるんですか?」
「あ、これ?みんなはちょこちょこ当たってるみたいだけど、俺はまだ100円も当たった事ないよ。」
「100円も?でもチャンさん、結構買ってますよね?」
パキューン。
「う…、そうね、結構買ってるね。そうだよね…。」
「何か勿体ない。」
ミチェルはまだ削っていないくじを手に取って言った。
「大当りへの投資だって考えるようにしてる。ま、削るのも好きだし。その内でかいのが来るでしょう。…ところでさミッチー、ジゼとはうまくいってるの?」
チャンサーは椅子にもたれかかったまま、目だけ動かして質問した。ミチェルの顔が少し赤くなったのを見て答えはわかった。
「あぁ、ふぅん。いいね。じゃあ、何だろう。」
「どうかしたんですか?」
「いや、何かあいつ最近調子悪そうだからさ。…なら気のせいかな。」
「ジゼ、あんまり自分の事話してくれないんです。私信頼されてないのかな?」
チャンサーはお茶をもう一口。
「いや、あいつはそうだよ。内に秘めるタイプっつの?」
「あー、何か心配になってきた。」
「だってうまくいってんだろ?」
「ええ、まあ。」
またちょっと赤くなる。
「じゃあいいじゃない。よし、じゃあこれ、ミッチーに一枚あげるから。」
まだ削ってないスピードくじを一枚差し出した。
「…わかりました。じゃあ、私、やってみます。」
「はい、じゃあこれでその銀のとこを擦りまくっちまいな!」
チャンサーが100円玉をパチンと机に置いた。
「いや、自分ので。失礼だけど、なんかチャンさんのだとダメそう。」
パキューン。
「う…確かにそうだな…。」


「キャー!何これ?何か揃いましたよ!」
「嘘?!どれどれどれ!」
ミチェルが削ったくじには何かクラゲみたいなマークが横に3つ並んでいる。
「あ!それ5万円ださ!ほら。」
「うそー!キャー!」
「やったじゃん!遂に!遂に!俺にも…」
「チャンさん、ありがとうございます!欲しい洋服あったんです!私、頑張れそう!」
パキューン。
「…あ、どういたしまして。…って、…ミッチー…。えぇぇ…?」

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コメント

チャンサぁー…かわいそう…★

うちのノブヨシ(おとん)も夢を買い続けてはや20年以上…これといって大きな当たりはありません★
そんな中「ものすごく当たるから」とお願いされて、御使いに行った有楽町の宝くじ売り場☆

おとんの分を大量に買って、せっかくだからと少量自分の分も買ったヤスオ(兄ちゃん)☆

結果、おとんの当たりは0★
ヤスの当たりは2万円☆

人生って厳しいもんですよね(ノ_<。)

投稿: スズキ☆ピロ | 2009/03/15 19:59

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