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2009/02/19

3と1/2.写真屋の息子と床屋の娘

夜明け前、シャッターを叩く音で起こされた。不愉快な気持ちで一階に降りると、父と母はまだ仲良く並んでいびきをかいている。彼らの耳にはこの手の騒音は届かないらしい。シャッターの音は、いつの間にか3・3・7拍子に変わっていた。
「誰だよこんな朝っぱらから。」
真っ暗な店に裸足で一段降り電気を付ける。時計を見ると『仕上がりの時間』は5時半を少し過ぎたところ。つまり今は5時だ。
「うー、さむ。」
シャッターの脇の背のものすごく低い扉を開けてそこから顔を出した。薄暗い中、自転車にまたがったまま空のペットボトルでシャッターを叩いている人物。床屋の娘だ。
「…おい。」
白い息が口から出た。向こうもこちらに気付きシャッターを叩くのをやめて、自転車の上からこちらを見下ろした。
「おはよう、マくん。」
「…何だよ。」
「髪、『テトラ』みたいになってるよ。」
「…何か用か?」
頭を触ってなおそうとするがペロンと戻る。
「あのさぁ、写真撮りたいんだよね。履歴書用の。」
「…んん?…それって、今じゃないと…ダメ…?」
「いや、ダメじゃないけど、ほら、善は急げっていうじゃん。」
「…はあ…。」
「いや、私も被害者っちゃー被害者なんだよ。さっき友達に電話で起こされたんだから。」
「…。」
眠くて返事もできない。

シュッシュッシュッシュッ。ランニングしているウィンドブレーカーの男の子が通りかかった。
「ザース!」
一度二人の前を通り過ぎたが、そのまま後ろ走りで戻ってきた。
「あ、マ先輩!こないだはありがとうございました!ちょっと落ちるようになりました!」
マは伸びをして挙げた手をプイプイとした。
「失礼シマース!」
シュッシュッシュッシュッ。

「先輩だって。」
「…何だよ。」
「マ先輩、お願いシャース!」
「…。」
「ね。今度髪切ってあげるからさ。」
「…ぃじゃあ、今くらいの時間に行くよ?」
「いや、それは困りますな。」
「…。」

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コメント

なぜだかわからないけん…☆
今まで勝手に『サルコ・ルペ』を男だと思い込んでいましたっ(>ω<)

けどきっと☆こんな早朝にスッピンで、むくみを気にせず写真を撮れるということはぁ…
結果メンズなみに男前な女性ですねっ☆(^∀^;)笑

投稿: スズキ☆ピロ | 2009/02/20 07:42

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